古着屋六兵衛日常記

きもの今昔問わず語り
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六兵衛の迷い
 先日、1人のお年寄りが来店しました。年の頃はすでに八十才は越しているらしい、小柄でやせたお婆さんでした。腰も少し曲がっていて、店に入ると大儀そうに、上がりかまちに腰を下ろしました。
 まだ十時を少し過ぎた頃でしたが、すでに外は蒸し暑く、石畳の歩道を手押し車を押しながらここまで来るのは、さぞや大変だったと思われます。

 お婆さんは手押し車のバッグの中から風呂敷包みを取り出し、買い取ってくれと言いました。包みを開けると、出て来たのはウールの着物三枚と、シミのついた羽織一枚、それに薄手の洋服が二枚。どれもが当店では扱えないものばかりでしたが、お婆さんは「古いものでも買ってくれると知り合いに聞いて、遠くからやって来た」と大きな声で言います。
 
 風呂敷を解く時、この中で一点でも買えるものがあれば、少し色をつけて買ってもいいかなと思っていましたが、どれもとても売り物になるものではありませんでした。私は意を決して、「ごめんなさい。これはうちでは扱えないものなので、買い取ることはできないんですよ」と言いましたが、お婆さんは顔を横にし、耳を私の方に向け、「耳がよく聞こえないので、もう一度」と言いました。私は少しためらいましたが、もう一度同じ断りの言葉をお婆さんの耳元で大きな声で言わざるをえませんでした。と同時に、なぜか顔が赤らむのを覚えました。”こんなお年寄りが暑い中わざわざ尋ねて来たのに、そのまま追い返すのか、薄情な奴だ”という後ろめたい気持ちがそうさせたのだと思います。

 私の大きな声でやっと意が通じたらしく、お婆さんはびっくりしたような目をしばらく私に向けていましたが、やがて「ああ、そうかね」と一声つぶやくように言いました。その落胆とあきらめの表情が、三年前に九十三で亡くなった母の顔にそっくりでした。
 
 今でも、あの時なぜ買ってあげなかったのかという後悔の念と、そんな甘い考えでこの商売は続けられないぞ、という叱咤の声とが交錯し、なんとも割り切れない思いを引きずっています。
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石畳石畳(いしだたみ、甃、石甃)は、*自然石を使った路面の舗装。この項で詳述する。市松模様のこと。詳細は市松模様を参照。.wikilis{font-size:10px;color:#666666;}Quotation:Wikipedia- Article- History License:GFDL
【車・道】用語辞典 | 2007/06/30 12:59 PM
今どきのマタニティーウエアは流行アイテムをうまく取り入れていますね。ひと昔前はいかにも妊婦服という感じのボディラインを包み込むドボッとしたシルエットが主流でした。現在は一見マタニティーウエアとは思えないシルエットが多くなっていますね。ボディーラインが
たーしの徒然なるままに | 2007/07/10 3:07 PM